最近流行の「セクシュアリティ診断・分析」サービスをレビューしてみた

もじゃです。ブログはご無沙汰しております。

 

先週くらいかな、Twitterで2つのセクシュアリティ診断・分析」サービスセクシュアルマイノリティ界隈で話題となりました。

 

1つは、主にLGBTQ+の就活転職を応援しているwebサイト「JobRainbow」さん。

 

もう1つは、セクシュアリティ分析を専門にやっている(?)「anone,」さん。

 

やってみて、「お!自分のセクシュアリティ がちゃんと表示された!!」とか「おや?全然違うセクシュアリティ がでてきたぞ?」とか、いろんな感想がTwitterで投稿されています。

 

今回はそれら2つの「セクシュアリティ診断・分析」のレビューとともに、問題点と改善点を出すことによって、もっとLGBTQ+とwebの掛け合わせを促進させてもらったらいいなぁと思って、本記事を書くことにします。

 

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そもそも前提のツッコミとして...

 

セクシュアリティ の「診断」「分析」は、あまりよろしくない、ということを言っておきます。  

セクシュアリティ には「自己決定権」、当てはめるかどうかも含めて、全ては自分で決めること、というのが大前提です。  

ところが、このような診断分析だと「他者によるセクシュアリティ の押し付け」になりかねない恐れがあります。  

 

あくまでも提案・可能性、「こうかもよ」「こんなのあるよ」程度でおさえるべきです。

 

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【診断の背景】

 

各サイトの「目的」を以下に引用します。  

 

☆JobRainbow☆ 

「自身が”LGBTに当てはまらない”と思っている人にも、固有のセクシュアリティがあるんだと実感してもらうこと。 また”自分はLGBT”と思っている人にも、新たな発見をしてもらう。そして”自分はLGBTなのかも?”という人には、より自分らしさを知るきっかけになってほしいと願っています。」

「複雑なセクシュアリティ用語の理解」

 

☆anone,☆

「あなたが普段感じている、性に関する疑問や不安が解消されるきっかけになるだけでなく、これまで性に触れてこなかった人でも、潜在的に気づけなかった自分を見つけることができます。」

 

以上からも分かる通り、まとめると以下のような目的があるといえます。  

 

・多様で複雑なセクシュアリティ用語の認知  

・「非セクシュアルマイノリティ」のセクシュアリティ意識化の助け

→「シスジェンダーヘテロセクシュアル」を中心としたマジョリティのセクシュアリティ認識と表明

セクシュアルマイノリティ当事者のクエスチョニング的「もやもや」の解決

 

要は自己と他者の理解への「きっかけ」にすぎないので、それ以上の利用はやめたほうがいい(と、各サイトでも推奨され、記載されています。)

 

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【質問項目】

 

各診断・分析の質問項目は以下の通りです。

(無許可転載申し訳ありません。。。) 

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JobRainbow「セクシュアリティ 診断」

 

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anone, 「セクシュアリティ 分析」

 

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【良いところ悪いところ】

 実際に私が使用して感じたメリット・デメリットは

 

☆JobRainbow☆

◯メリット

・設問数が少なくて取り組みやすい

・設問が明確。何のセクシュアリティを尋ねているのかがわかる

・不要な質問項目は省略されるようになっている

アルゴリズムのデザインがしっかりしている

 

◯デメリット

・過去にLGBTQの他に関する性的「しこう」の紹介記事を出していたが、それは反映されていない

・おそらくAセクはでてこない仕様?

 

 

☆anone,☆ 

◯メリット

・質問項目が多い分、より「正確」な判定がでやすい

・当事者でも認知度が低いセクシュアリティも含まれていて、多様性に富んでいる

 

◯デメリット

・「表現する性」項目の結果が意図しない結果になりがち(後述)

・「男女関係ない」はバイを聞いてるのかパンを聞いてるのか不明瞭

・設問中の「同性」は身体性・戸籍性・社会的性など、どの性別要素をベースにしたら良いのかわからない

・おそらくAセクはでてこない仕様?

・「〜の経験がある」項目。経験はないけど欲望はある時はどう選択したらいい?

 

です。実際にやってみた人の中で、いろいろ感じることがある人もいるかと思います。

 

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【各設問の問題点・改善点】

 では本題です。

ゲイの要素とトランスジェンダーの要素とその他のセクシュアリティの要素があるわたし、もじゃが個人的に気になった設問を取り上げて、問題点と改善点をツッコミたいと思います。

 

各設問に対するツッコミを簡単に表でまとめてみました。

表中の「因子」は「設問によって聞きたいであろう性質」、「クラスタ」は「因子の性質から得られうる具体的なセクシュアリティ用語 」を示しています。

 

全ての項目に対して文章でツッコむのは大変なので、個人的に特に重要だと思った項目のみ文章でいろいろと書きます。

 

なお、もちろんわたしも全てのセクシュアリティを熟知しているわけではありません。本投稿では「セクシャリティAtoZ:あとりえ 85-n.http://www.85-n.net/blog/sexuality-atoz/ を参考にしています。

 

☆JobRainbow☆

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「1,あなたの身体的な(生まれながらの)性別は?」

出生時の性別を尋ねている設問だと思います。「身体的」な性別の場合、性分化疾患当事者が回答できない場合があるのと、現在の身体性と出生時に割り当てられた性別が違う人がいる時に回答しづらいかなと思います。

→ 「身体性」を尋ねる場合は遺伝子レベルの「XY」「XX」をきいたほうが適切だと思うので、選択肢「その他」を増設。

また、戸籍性別変更者もいるので、別設問で「現在の戸籍の性別は?」を増設するのもいいかも。当然ながら、「出生時に割り当てられた性別は?」も加えた方がいい。

 

「2,あなたは自分をどう認識している?」

いわゆる性自認の項目です。「トランスジェンダー」と「性別不合(「性同一性障害」)」では大きく変わってきます。要は、「身体の性別に対する違和感」があるかどうか。この2者では立場が大きく変わってきます。(病理モデルと社会モデルとの違い)

→別設問にて「身体の性別と自己認識している性別との間に違和感があるか?」を増設する。また、「(性自認とは別で)社会的にどのような性別で生きているか?」の設問もあった方が良いかと思います。

 

☆anone,☆

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「1,男性・女性両方の人を独り占めしたいと思ったことがある。」

この設問は2つの要素が含まれています。

「男性女性両方」で「バイセクシュアルかどうか」、「独り占めにしたい」で「交際関係性における『モノアモリー(交際関係においては1対1の関係性を指向する)』かどうか」。どっちの要素で回答すればいいかわからないので、1要素につき1設問が良いでしょう。

「男性女性両方に(or性別関係なく)恋愛性愛指向がある。」「交際関係においては1対1の関係性を重視する。」「恋人は1人を独占していたい。」などの設問に分割する。

 

「9,自分は他の人から見て魅力的にうつっていないと思うほうだ。」

おそらくルックスを重視しているか内面性を重視しているか、少し飛躍すると、「絆」が重要な「デミセクシュアル・デミロマンティック」の項目にも見えなくはないですが、他者からの魅力で規定されるセクシュアリティ 用語がどうやら存在しないっぽいです。

→「セクシュアリティ」分析なら不要。ただ、恋愛で重要視する事柄や回答者の性格特性・自尊心強弱を聞く意図があれば問題無い

 

「13,同性の大勢のグループが苦手だと感じることがよくある。」

ホモソーシャル、学生の体育会系部活などでの、特に「男同士の熱い絆」みたいなやつに多く見られる性質で、異性愛者排除性のある同性同士の同質性集団社会のことを言いますが、おそらくこの設問はホモソーシャル嫌悪性を測定しているのかと思います。

ところが、「同性」である他者の性的指向性によって苦手かどうか変わってくると思います。例えば、ゲイ同士なら安心するけどノンケ男子集団は苦手、とか。

もしくは、「集団の方が楽しいか1人or少人数でいた方が楽しい」といった性格特性を問うてる可能性も否定できないですね。

ホモソーシャル嫌悪性を問うのであれば「男同士の熱い絆のようなものに自分を溶け込ませるのは苦痛だ」などはいかがでしょうか。

 

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「17,自分が最も好んで着る服装を選んでください。(服の画像から選択)」

「36,男性/女性用に限らずいいと思ったものはなんでも取り入れる方だ。」

これは「表現性」の中でも、ユニセックスジェンダーフリー指向性を問う設問。Twitterでも問題視されていましたが、シスジェンダーのゲイ男性が「表現する性」の結果で「Xジェンダー」と表示されてしまう事象があり、困っていたツイートがありました。

 

つまりこの設問はジェンダーアイデンティティ(「性自認」)」と「ジェンダーエクスプレッション(表現性)」との混同を起こしているものです。

例えば、性自認男性の身体戸籍性男性の異性愛者(シスヘテロ男性)でも、若年層、特に原宿界隈では「メイク男子」「スカート男子」のようなことがよくあります。それを「Xジェンダー」と言えるのでしょうか?言えないでしょう。

 

要は、以下の因果関係が成立するかどうかの話です。

Xジェンダー「だから」ジェンダーフリー指向性がある

ジェンダーフリー指向性がある「から」Xジェンダーである

 

→この設問を残すのであれば「ジェンダーフリー指向性」を問うものにして、結果画面の「表現する性」ではジェンダーフリー指向性の有無」のみを表示すべきで、「性自認」系のセクシュアリティを表示すべきではありません。

 

「23,友人と恋人との区別をつけなくてもいいと思える。」

この区別をするしないで規定されるセクシュアリティ用語がなかったので、よくわかりませんでした。

ただ、いわゆる「セクシュアリティ」には現時点ではなっていないものの、セクシュアリティ問わずこの話題はよく出ます。「友人と親友と恋人とパートナーの違いって?」みたいな。

推測ですが、友人関係と交際関係とを明確にすることである種の独占欲、モノアモリーかオープンリレーションシップかを問うているのかもしれません。

ちなみにわたしは友人だろうが恋人だろうが、大切な人は大切です。この人生で恋人できたことがありません。告白されたこともありません。それはそれで悲しみ。

 

「28,『好みの同性のタイプは?』と聞かれたら思い浮かべることができる。」

同性に対する恋愛性愛指向性、異性愛者か同性愛者かを判断する設問。問題は「同性」の定義です。言いたいことはわかるけども、、、

ここでの「同性」がどの要素をベースにしているかわからないんですね。

身体性ベースなのか戸籍性ベースなのか性自認ベースなのか社会的に生きている性別ベースなのかその他、、、

基本的に「タイプ」っていうとゲイ用語で「イケる」、要は性愛対象の話だとは思います。もしかしたら、男性異性愛者の人が「この男性歌手かっこいいー」というのを反映する可能性もありますね。

 

「31,男の子っぽく/女の子っぽく見られたくない。」

主に外見における中性性を問う設問。

問題は「男・女の『子』」。

基本的に「セクシュアリティ」は性別要素だけを取り扱う概念。「子」があると、年齢要素も入ってくるかと思います。もし年齢要素も問うのであれば、ペドフィリア指向や「ロリコン」「ショタコン」も設問に入れなければなりませんね(大議論になりますが)。

「男っぽく・女っぽく見られたくない」が適切。

 

「32,同性の友人の体がつい気になってしまったことがある。」

これは同性の身体接触性に関する設問で異性愛者かそうでないかを問うてる設問。

問題は、回答者が思春期の年齢層の場合、異性愛者同性愛者問わず、第二次性徴で他人の外性器の形状と自分のとが同様かどうか不安になることが多くあります。この設問の場合、そのような不安定さが性的指向へと反映されてしまうことがあります。

「同性の友人の体が性的にきになってしまう」がいいかな。

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「34,交際相手とはおだやかな関係性を重視している。」

関係性の「おだやかさ」が規定するセクシュアリティ用語が現時点では存在しない模様です。

ただ、これもよく酒の肴として話題に出ます。「交際したらずっとアツアツな関係性がいい」とか。詳しくは、後述の「愛のトライアングル理論」「ラブスタイル類型論」を参考にしてもらえれば。

→いわゆる「セクシュアリティ 」とは別の項目として問うのは面白そう。

 

「40,交際相手の外見がよければ内面は気にしない。」

「44,外見ではなく、相手の人間性に強く魅了される」

「51,これまで強く惹かれた人はルックスに共通点がある。」

外見的・内面的魅力重視で規定されるセクシュアリティは「デミセクシュアル・デミロマンティック」系が近いと思われますが、微妙です。

 

「43,人生のパートナーがいることを重要だと感じない。」

リレーションシップ指向性のノナモリー、交際・恋愛関係を求めないかどうかを問うてる設問。

ただ、恋愛関係とパートナーの必要性は必ずしも結びつかないケースがあります(友情結婚とか)。

 

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「47,『筋肉質な人』『胸の大きな人』などの特徴がある人に強く惹かれる。」

対義は「中性的外見指向」。

この問題は性的「指向」なのか「嗜好(フェチ)」なのか

例えばゲイでも、筋肉質な人が好きな人もいれば、正反対の中性的な細い前髪系が好きな人もいるでしょう。

要は、外見的な「性別らしさ」に対する好意は「性的指向」なのか「性的嗜好(フェチ)」なのかは議論中で、「セクシュアリティ 」として分析するのは一旦保留した方がよい設問です。

 

「48,交際相手であったとしても、必要以上に相手のことを知ろうとは思わない。」

何のセクシュアリティを問おうとしているのかよくわからない設問。心理学における「SVR理論」や「ラブスタイル類型論」(後述)においては、恋愛関係は魅力があって相手との価値観が合ってからこその「交際関係」だとは思うけど、この設問の関係では「交際関係」と言えるかはなんとも言えないでしょう。

 

「49,対人関係において嫉妬や不安を感じることはほとんどない。」

おそらくリレーションシップ指向性で「オープンリレーションシップを求めているか」の設問。

→「対人関係」よりは「恋愛関係」「交際関係」にした方が適切。

 

「50,『人類愛』という言葉は自分を表すのにぴったりだと思う。」

もしオープンリレーションシップ、つまり交際関係におけるものを問うなら「人類愛」は不適切。

基本的に「セクシュアリティ」では性愛と恋愛のトピックが中心。「人類愛」「博愛主義」は現行では「セクシュアリティ 」の範疇では無いので、聞くのであれば、友愛博愛性愛恋愛その他「愛」を明確にした方が正確な結果が出るかと思います。この「多様な『愛』」は心理学では「愛のトライアングル理論」や「ラブスタイル類型論」で説明されているので、1つの参考として後述することにします。

 

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「58,交際期間が長くなればなるほど、セックスの必要性が感じられなくなる。」

長期交際期間における「倦怠期セックスレス」含むそれが何らかのセクシュアリティ用語に該当するかは不明。

交際期間における「愛」の在り方と変化に関しては「SVR理論」と「愛のトライアングル理論」で後述しようかと。

 

「60,生まれたときのからだ」

これはJobRainbowの診断の第1問と同様に、身体性と戸籍性と社会的性別うんぬんの話。

 

「63,これまで最も経験した恋愛の対象」

わたしみたいに非リアで全く恋愛経験がない場合で「わからない」を選択すると、クエスチョニングやAロマンティックと誤判断される恐れがある。

「最も経験した/これから経験したい恋愛の対象」に変更。

 

「65,他の人よりも恋愛経験が少ないと思う。」

「66,他の人よりもセックスの経験が少ないと思う。」

これは、経験の多さ少なさと、狭義の「セクシュアリティ 」に関連が見出せず、どんな内容を測定したいのかがよくわからないです。もしかしたら、性的指向的経験による自尊心を問うてるのかもしれない。

→仮に性的指向的経験による自尊心をきくのであれば、ローゼンバーグ自尊感情尺度の日本語版(星野, 1970)などの自尊心を尋ねる質問項目を追加して、セクシュアリティと心理状態との関連の分析を行うと面白いと思う。

 

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【交際関係と愛の心理学理論】

せっかくなので、設問へのツッコミででてきた「SVR理論」と「愛のトライアングル理論」、追加で「ラブスタイル類型論」、要は交際関係の進展の理論と「愛の種類」に関する(ちょっと古い)理論を説明します。

 

SVR理論(Murstein, B.I. 1977)

The stimulus-value-role(SVR) theory of dyadic relationships. 
In S.Duck(Ed), Theory and practice in interpersoal attraction.
 
パートナーシップの考え方で、出会いから恋愛、結婚(同棲)へ向かうプロセスを3段階に分け、各時期に必要な要素を示唆している理論。
 
・第1ステージ「刺激段階(Stimulus)

出会いから恋愛初期の時期。相手の外見的魅力や性格、言動、社会的評価などから刺激を受けて好意を抱く。

「かっこいい・かわいい!しゅきしゅき!」な段階ですね。

 

・第2ステージ「価値段階(Value)

恋愛関係に進んだ時期で、相手との価値観を見定める時期。特に相手との価値観の共感共有、類似性が重要で、価値観が似ているなら「おだやか」に過ごせるかと。

「わかる。うちら気が合うよね。」な段階。

 

・第3ステージ「役割段階(Role)

結婚や同棲を始める時期で、自分とは違う相手の価値観も受け入れられる段階。仕事や家事分担など、交際関係上お互いの役割分担や苦手な部分を補う相補性が重要。

「合わないところもあるけどやっぱり好き。お互いに支え合って生きていこうね!」な段階。

 

◯愛のトライアングル理論(R.J.Sternberg(1986)) 

 A Trangle Theory of Love,  Psychological Review

 

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タンバーグによると、人間の恋愛経験は以下の3つの要素から構成されているとした。

「情熱」(passion・図の「愛情」)

感情的要因・性的欲求を含む

「親密さ」(intimacy)

認知的要因・リレーションシップの近さ

「コミットメント」(commitment・図の「献身」)

意志的要因・離れられない関係性

 

これら3要素の強弱によって「愛」のタイプの傾向がわかるという。

 

・完璧愛:情熱・親密さ・コミットメント全てが強い

・好意・愛好:親密さ強く、他は弱い

・夢中・心酔:情熱強く、他は弱い

・虚無愛:コミットメント強く、他は弱い

・情熱・ロマンティック愛:親密さと情熱が強い

・友愛:親密さとコミットメントが強い

・愚愛・一方通行の愛:情熱とコミットメントが強いが親密さは弱い

・非愛:全ての項目が弱い

 

◯「ラブスタイル類型論」(Lee(1973)) 

the colors of love

愛には以下の6種あることを提示した。

 

「ルダス」(Ludus)

「遊びの恋愛(game-playing, uncomitted)」

恋愛を駆け引きのように楽しみ、相手を次々に取り替えて行こうとするので、深く関わらず、複数の相手とも付き合える。そのために、自分の情報を開示しないことがあったり、嫉妬や独占欲を示すことがなかったりする。

 

プラグマ(Pragma)

「実用的な恋愛(practical, calculating)」

恋愛を自分の目的達成の手段と考えている。例えば高い社会的地位につきたい目的で恋愛相手を選んだりする。

 

ストルゲ(Storge)

「友情の恋愛(friendship)」

友情や仲間意識に近い感覚の愛。友人関係からの進展が典型的で、相手に対して情熱な愛情や独占欲、嫉妬はあまり感じない。

 

アガペー(Agape)

「愛他的な恋愛(altristic, giving)」

見返りを求めない献身的な愛。相手の利益を第一に考え、自己犠牲を厭わない。

 

エロス(Eros)

「情熱的・エロティックな愛(passionate, erotic)」

中心核は身体的魅力、強い情動、容姿の好み、関係の結びつき。恋愛の本質をロマンスと考え、恋愛を至上のものと考えている。

 

マニア(Mania)

「偏執狂的な愛(obsessional)」

情熱的で相手に強迫的にのめり込む。それが故に独占欲が強く嫉妬深い。また、快楽と苦痛が交互に現れることがある。

 

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【全体的な考察】

このような診断・分析をするには必ず「目的」を設定する必要があります。

JobRainbowさんにおいては、「本業」は主にLGBTQ+に向けた就活転職支援サービスなので、そのサービスを利用するところにつなげるという目的があるかと思います。

anone,さんは「多様性を死語にするために。」「無意識の偏見と差別...」というビジョンを掲げてこのサービスをローンチしているとのことです。

 

要は、セクシュアリティを診断分析してセクシュアリティを知ったうえで何を提示していくのか、というところが重要なのかなとは思います。

 

「LGBTQ+」「SOGI」は、基本的には「性的指向」と「ジェンダーアイデンティティ 」、つまり「性別」と「どの性別に向く/向かない」の話題だとは思いますが、例えばリスロマンティックやサピオセクシュアルのように、性別以外の要素に対する指向性も「セクシュアリティ 」として定義されるようになってきました。そのあたりの、「何を『セクシュアリティ 』とするか」という議論も深まっていけば良いのかなとは思います。

(ただし、少し前にTwitterで「自分の性自認は(歌手の)aikoだ」という言説がゲイvsトランスジェンダー・「性同一性障害」との間で問題となりました。これに対しては、「性自認」は「性別の自己認識・性別に関わる自己の、ある種の『社会的正当化』」のためだけに使用されるべきで、「自分のアイデンティティaiko」 ではなく「性自認aiko」という言い方は、非シスジェンダーの社会的生存権利を無下にしかねないので、使用は慎重にすべきと考えています。これに関してはわたしはもう議論する気はありませんので、わたしだけじゃなく、他の非シスジェンダー当事者にも尋ねてみてください。わたしは議論(のネタ)のためにセクシュアルマイノリティとして生きているのではありません。生存するのに必死でそこまでのリソースはあまりありません。「じゃあなんでこんなブログ書いてるの?」って聞かないでー!

 

統計学的な話をすると...

JobRainbowさんは「このセクシュアリティにはこの質問がいいね」、anone,さんは「複数の質問により要素をまとめて、その要素の多さ少なさでセクシュアリティを分析する」ように見えるんです。

つまり、JobRainbowさんはクラスタ分析的、anone,さんは因子分析的であると感じます。

 

わたしは大学は心理学専攻だったのでこんな話になりますが、両者ともに設問をブラッシュアップさせてきちんと統計的処理をすると、とても面白い結果がでそうですし、

その結果から、(広義の)セクシュアリティと社会の現状とを照らし合わせた具体的な課題と対策が見えてくるのではないか、そんなふうに思います。

 

「LGBTQ+」「セクシュアルマイノリティ」のwebサイト・サービスがここ2年くらいでかなり増えていますし、同性パートナーシップ条例施行など、様々なトピックが「一般社会」にも出始めています。

 

マジョリティへの人権啓発とともに、セクシュアルマイノリティ内部間の意見の相違や争いもまとめつつ、セクシュアリティにまつわる世界がもっと良くなっていけば幸いだと思いつつ、この記事の締めにしたいと思います。

 

何とか這いつくばって、これからも生きていこうかと思います。おしまい。